会社分割company-split

会社分割は、わかりやすく云えば、会社(旧会社)が保有する事業資産を他の会社(新会社)に引き継がせることをいいます。
会社法という法律に定められていますが、引き継がせる会社(新会社)を新たに設立する場合(新設分割)と、既に存在する場合(吸収分割)の2種類があります。

日本ではまだなじみがありませんが、欧米では事業を再構築するために広く使われています。

会社分割と会社の再生

会社分割は、事業譲渡と並び第二会社方式による事業再生の方法の一つです。
会社分割は、成功すれば債務超過で過大な債務に苦しんでいる会社(旧会社)が、負債を会社(旧会社)に残したまま従業員を含む会社の優良な事業資産だけを切り出し他の会社(新会社)に引き継がせることができます。

なお、従来会社分割は、事業譲渡と異なり民法上債権者に認められた詐害行為取消権(債務者が財産減少行為を行ったときにこれを取消す権利)の対象にならないという点をメリットとすることもありましたが、近時会社分割も詐害行為取消権の対象になるとする下級審裁判例が出されており、注意が必要です。

会社分割の限界

会社分割に対し、当然ではありますが債権者からの反撃手段があります(会社分割無効の訴え。今後の成り行きによっては民法上の詐害行為取消権、法人格否認の法理、損害賠償請求他)。

また、そもそも旧会社は財産を新会社に移転する代わりに新たに新会社の株式を取得します。旧会社に残された負債の債権者は、旧会社が新たに取得したこの新会社の株式に狙いを定めるかも知れません。債権者が新会社株式の取得に成功すれば債権者は新会社を自由にできますから、結局旧会社の事業資産が債権者に亘ってしまうことになります。

そこまでは行かなくても、旧会社は依然負債を負っており債務超過ですので、いずれ清算処理(破産)することを余儀なくされるでしょう。その際、旧会社はプラスの財産として新会社の株式を有していますので結局この処分が問題となり、新会社株式が第三者の手に渡ってしまうリスクから免れることはできません。いわゆる出口戦略が極めて重要になります。

会社分割においては、債権者から積極的な協力を得ることまでは必要なく、その意味で債務整理との関係で利用できる方法の一つではありますが、他方、債権者から不信感を持たれるようなやり方をしたのでは、結局成功しません(経営者が連帯保証をしておられる場合はなおさらです)。

新聞報道によれば、平成22年9月経営コンサルタント会社の経営者が無資格で会社分割を行い弁護士法違反(非弁行為)を理由に逮捕されましたが、この会社分割の対象となった新旧両会社はいずれも結局破産したとのことです。

最近は、ネット上で特にコンサルタント会社からのものですが、「債権者に知らせることなく会社分割を進めて負債処理ができる」、「会社分割を行えば簡単に負債の処理ができる」などの宣伝が多数見受けられますが、先の新聞報道からも明らかなように会社分割を利用すれば簡単に負債の処理ができるわけではありません。

確かに、会社分割は債務整理との関係で利用できる方法の一つですが、これが有効な方法となる条件と状況が必要になりますし、債務整理は当然のことながら法的に複雑な専門的な判断が要求されますから、無資格者ができるものではありません。

会社分割の限界

会社分割は、それ自体単独ではなく、事情に応じ、裁判所の関与を受ける法的整理やこれを受けない私的整理の中で適切な道具として利用するものであり、出口戦略、全体スキーム(法的整理、私的整理)を慎重に検討することが何よりも重要になります。

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