民事再生の最大の長所は、(再生)債務の支払を原則として全て一時棚上げし、資金と時間の余裕を確保した上で再生計画の作成に取りかかり、債務の免除(カット)を中心とする再生計画案を債権者の多数決で実行できる(反対債権者が存在しても可能)点にあります。
資金が苦しい会社を再生するには、何よりも債務の支払を止め、善後策を検討する時間を確保する必要があります。
この点で、民事再生は、弁済禁止の保全処分が用意されていますし、正式に民事再生を始める決定(開始決定)が発令された場合には、法律上会社は原則として債務の弁済が禁止されます。
弁済禁止の保全処分は、裁判所から正式に開始決定が発令される前に、債務会社に対し一時的に債務の弁済を禁止する決定で、債務会社がこの保全処分を受けると以後弁済してはいけない状態になります。
そして、その後開始決定が発令されますと、法律上債務の弁済(支払)が禁止される結果、債務会社は債務の支払から合法的に解放され、再生計画を作成する資金と時間の余裕を得ることができるのです。
民事再生の流れは後で詳しくご説明しますが、債務会社は再生計画の作成に取りかかり、債務免除を中心とする再生計画を作成して債権者集会に諮り、賛成多数となれば反対債権者の債権も含め全員の債権カットが認められます。
私的整理の場合と比較するとよく分かるのですが、法律の原則では債務の免除をうけるには全債権者の同意が必要となります。どのように合理的な提案であっても、債権者が気に入らなければ債権のカットは本来できないのです。
そのため、私的整理では債権者全員の同意を得ることができなければ、実際上債務会社の再生を実現できないのが現実です。
しかし、民事再生では、債権者集会で多数決で過半数の賛成を得ることができれば、たとえ大口の、あるいは有力な反対債権者がいても、再生計画案(債務カット案)が成立し、全員の債権カットができるのです。
当事務所の取扱実績をご覧いただければと思いますが、実際に元本を含めた債権額の90%以上のカットが認められた例もあります。
しかも、残10%の配当(弁済)は利息を免除された上で、5年間から10年間の分割弁済となります。
反対債権者も相当な数いましたが、債権者集会で過半数の賛成をいただき、これを受けて裁判所より認可決定の発令を受け、無事再生計画が成立しました。
これが民事再生の最大の魅力です。
このように、支払いを一時停止したうえで、大幅な債務カットが認められ、しかも10年間までの分割弁済が認められるのですから、民事再生が成功すれば会社の資金繰りは劇的に回復します。